
仏独共同歴史教科書の序文(抜粋)です。
この歴史教科書は、教科書の歴史に新たな時代を拓いた。仏独共同の歴史教科書は、フランスとドイツのlycée[高校]の生徒を対象としている。そして両国の現行の教育計画にも合致するとともに、互いの世界観を提供しあうことを目指している。
密接に絡み合った歴史、共有しあるいは争った記憶、いく度かの接近による現実の共有、両国の歴史書にみられる類似点と相違点および相互作用の吟味、さらにはヨーロッパ、世界における両国の歴史。こうしたものが、この教科書を練り上げる大方針であった。そしてその方法および内容が、いつかヨーロッパの歴史教科書の土台を提供するという教育学的および科学的な価値を生みだすのではないか。
この新しいタイプの教科書は、2003年1月にベルリンでおこなわれたエリゼー条約の40周年祝賀の一環として開催された仏独青年議会において出された願いに答えるものである。仏独両国政府の熱意に支えられて、この教科書は2004年4月にそのビジョンと内容が認められた。共同作成委員会は、教科書の形式と概念についての全体方針を決め、仏独の編集協力態勢に執筆と製本を委ねた。教科書は全部で3巻となる。第1巻(ギリシャにおける民主主義~1789年のフランス革命)、第2巻(19世紀の変化~第二次世界大戦)、第3巻(1945年から現在)。
この企画は、3つの協力態勢による成果である。つまり共同作成委員会の仏独の専門家の間、共同作成委員会と両国の担当省の間、委員会と編集者との間につくりあげられた協力態勢である。教科書の仏独の二つの版は同一のものである。それはこの二つの版が、最初に推敲した概念を固く守り、同じ資料、同じレイアウト、地図、写真、図像を含むからである。
フランスの青年もドイツの青年も、これほど相手の国の歴史に触れたのはこれまでなかったことではないだろうか。それはより開かれた視野に身を置くことである。すなわちヨーロッパ、世界に開かれた視野に。そうでなければ、1945年以降の世界にどうやって参加することができるだろうか?
教科書はその教育学的および歴史的な願望を超えて、市民的願望、先の世界大戦が踏みにじった、人権あるいは民主主義といった普遍的な価値の上に、歴史的に築いてきたヨーロッパの意識を教えるという願望を含む。
欧州連合の標語は「多様の中の連合」ではなかったか?この歴史教科書が、その例証にならんことを。またこの教科書が、歴史家という職業のチャレンジ精神とその限界を生徒に語るものにならんことを。すなわち過去について考慮することによって、現代を照らし出すことを。それは未来を率直に考察することになるのである。
共同作成委員会
共同作成委員会
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