行動する高校生 今年の春は、教員削減法案反対のデモがフランス全土で繰り広げられました。教員組織や父母とともに高校生のデモが連日のようにおこなわれました。テレビでは反対行動の先頭に立つFIDL(独立・民主高校生同盟)の代表と、削減案に賛成する右派系のUNI-lycee(全国学生連合-高校生組織)の代表が,政治家顔負けの激論を交わしていました。
2006年の春には、26歳以下の採用に際し2年間は理由を提示しないで解雇できるCPU(初回雇用契約)法案にたいして、CGTや全国学生連合とともに連日デモを組織しました。このときは、デモの効果を低めることを目的として高校生の隊列に紛れ込む極右などにたいし、隊列の両側を男子がスクラムを組んでデモを守っていたのが印象的でした。このたたかいはCPU法案を撤回に追い込み、ドビルパンの退陣のきっかけをつくりました。
行動する高校生を生み出すのは? こうした行動する高校生はどうして生まれるのでしょうか。この問いに答えるのはとても難しいことです。私には、ひとつの要因として歴史と哲学を重視するフランス共和制の伝統にあるのではないかという気がするのです。フランスの高校生は、最終学年で哲学を学びます。それも概論ではなく、ひとつの哲学書を1年間通して学ぶのです。(バカロデアの哲学の問題は、抽象的な問いについて自分の考えを述べなければなりません。そして点数配分において、哲学により比重がおかれます。)そしてテレビも討論debatの番組を多く放送し、外国を含めた過去の重要な出来事を周年ごとに特集します。こうした環境が、高校生の思考と感性を育てるのではないかという気がします。そして討論を通じてひとつの意思、そして行動が生まれるのではないかと思うのです。
高校生組合 syndicat lyceen ここで行動を呼びかける高校生の組織を見ることにします。高校生組合の全国組織は4つあります。1987年設立のFIDL(独立・民主高校生同盟)は5,800名の活動家を、1994年設立のUNL(全国高校生連合)は約6,000名、2004年設立のSUD-lycee(連帯・統一・民主の高校生)は約900名、2005年設立のUNI-lycee(全国学生連合―高校生組織)は約4,600名の活動家を組織しています。そして今年の9月にはUMP-lycees(国民運動連合-高校生組織)が誕生しました。これらの高校生組織はそれぞれ、政党あるいは運動体と友好関係にあります。FIDRは共産党と「SOS人種差別」という団体と、UNLは社会党と友好関係をもちます。この二つの組織は、この春の行動で共闘を組みました。UNI-lyceeは教員削減法賛成の立場で、また昨年の大統領選挙ではサルコジ陣営の選挙運動に貢献しました。そして今年設立されたUMP-lysees は政府与党UMPの高校生組織です。
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