もはや不足しているのは銃だけである。パリには、巨大な銃保管庫があることを人びとは知っている。知事のベルチエは、3万丁の銃を取り寄せ、そして10万個の薬莢の製造を命じていた。市長は、州のこの大きな動向について知らないはずはなかった。保管庫の在り処を激しく迫られて、シャルルヴィルの工場が3万丁の銃を約束し、さらにそのうちの1万2千丁が直に届くことになっていると答えた。これが嘘であることを裏付けたのは、グレーヴェ広場を横切った数台の荷車である。そこには次の文字が貼り付けてあった、「大砲」。これは銃に違いない。市長は銃を箱につめて、保管庫に入れさせたのだ。しかし銃の分配は、フランス衛兵を使いたかったのだ。人びとは兵舎に走った。しかし人びとの渇望を察した士官たちは、一人の兵隊も渡さなかった。それで選挙人たちは自分たちの手で、分配しなければならなかった。彼らは箱を開けた!そこに見いだしたものは?ぼろ布だけだった。人びとの怒りは頂点に達した。裏切りだと叫んだ。返答に窮したフレッセルは、人びとをセレスタンとシャルトルーの僧院へ向かわせることを思いついた。「僧侶が、武器を隠し持っている」。そこで人びとを待っていたのは、新たな失望だった。シャルトルーでは、門をあけて全てを見せた。くまなく探したが、一丁の銃も出てこなかったのである。
選挙人たちは各区に、5万本の槍を作る許可を与えた。槍の鍛造は36時間でできた。しかしこの突貫の作業も、目下の危地を前にしては長すぎた。夜になって、すべてが解決した。人民とは、指導者たちが知らないことでも、常に知っているものである。廃兵院に巨大な銃器庫があることがわかった。その夜、ある区の代議士たちがブザンヴァル司令官、そして廃兵院の長官であるソンブルイユを訪ねた。「それについては、ヴェルサイユに手紙を書いてみよう」とブザンヴァルは、そっけなく言った。実際、ブザンヴァルはブログリー元帥に警告したのだ。奇妙というか、驚くべきことだ!元帥は何の返事もよこさなかったのである。
この信じがたい沈黙はおそらく、噂にもなっていることだが、参事会の完全な無政府状態が原因であろう。国民議会の解散という既定の一点を除いて、全ての点で全員が不一致なのである。思うにそれは、あまりにも謀略と詭弁に馴染んだ宮廷の誤解、つまりあの巨大な運動をちょっとした陰謀の効果が作用したものと見て、パレ・ロワイヤルが全てを仕組み、オルレアン公が全てをまかなったと信じたことにも原因があるのだ。いかにも幼稚な解釈ではある。何百万もの人間を買収することが可能なのか?それではオルレアン公は、同じ時期に、課税の拒否を宣言したリヨンやドフィネの蜂起にも金を出したとでもいうのか?彼は、武器を取ったブルターニュの諸都市に金を出したのか?レンヌで市民に発砲するのを拒否した兵士たちに金を払ったのか?
人々の喝采とともに、オルレアン公の胸像が担ぎ上げられたのは事実である。しかし彼自身はヴェルサイユにいて、政敵に調子を合わせるように、自分も他人と同じか、それ以上にこの暴動を恐れていると公言したのである。城に泊ってくれるように懇願されたこともあった。宮廷はオルレアン公を手もとに置き、陰謀の全ての張本人を押さえることで、不安を少しでもなくしておきたかったのである。今のところ軍事の全権を委ねられている老元帥は、軍隊にしっかりと守られ、国王の身の安全と、誰も気にもしないヴェルサイユの防衛を維持している。そしてパリの取るに足らない硝煙など、ひとりでに収まるものと放置している。
第6章 終り
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