
勝利者に導かれて、パリの町を行進するバスティーユの囚人たち
5時30分になった時である。グレーヴ広場で叫び声があがった。遠くで騒ぎが起こり、それが近づき、瞬く間に喧騒の嵐となった。「バスティーユが落ちたぞ!」
広間はすでに満員である。一度に千人が入ってきたのである。その後ろから、一万人が入ろうと押し合っている。板張りが軋み、長椅子はひっくり返され、柵は机の上に、机は議長席の方に押しやられた。
全員が武装していたが、その様は異様であった。裸に近い者もいれば、纏っている服の色も皆違っていた。ひとりの男が肩車に乗せられ、頭には月桂樹を被っていた。エリーである。全ての戦利品と捕虜が、その周りを囲んでいた。雷鳴も耳に届かないほどの喧騒の中を、ひとりの若者が敬虔さに満ちた表情で瞑想に耽るかのように、列の先頭を歩いていた。抱えた銃剣の先には、三たび呪われた非道の元凶、バスティーユの掟文が突き刺され、ぶら下がっていた。
牢獄の鍵も、だれかが手にしていた。吐き気を催すほど忌まわしい、この非情の鍵は、何世紀ものあいだ、人びとに苦痛を与えるために使われてきた。運命あるいは神の摂理は、鍵を知りすぎるほどに知っている者、かつての囚人に、鍵が託されるのを望んだのだ。国民議会は鍵を古文書保管庫の中に保管した。専制君主の錆ついた装置が、専制君主を打ち砕いた法と並んで置かれているのである。我々は今もなおこの鍵を、国の保管庫にある鉄の戸棚の中に保管している。あぁ!世界中のすべてのバスティーユの鍵を、この鉄の戸棚の中に閉じ込めることができるならば!
続く
スポンサーサイト
trackback URL:http://billancourt.blog50.fc2.com/tb.php/351-e256b492