この教科書は、平等がどれだけ実現されているかを検証する構成になっています。
それは、「人と市民の権利宣言」の第1条「人はすべて、尊厳と権利において自由かつ平等に生まれる」が、差別および平等をとりあげる全ての章(第1章、第3章、第4章)の冒頭に掲げられていることでわかります。
また絶えず「法には、何と書いてあるの?」と、法の規定を確認・意識させています。
第1章を見てみましょう。
まず人は権利において平等であることが法律で守られていること、多様な文化の中で生きることは豊かなことであることを学ばせます。
身近な学校における差別から始まり、サッカー界における人種差別、反ユダヤ主義とアメリカにおける黒人差別まで、さまざまな差別を認識させます。そして複数の人種は存在せず、人間はひとつの人種である人類に属する学説を紹介します。
次にフランス社会における差別の実態を示し、差別との闘いが大切であると説きます。また法による罰則や、国の反差別機関であるHALDEの存在(テスティングまで)も教えます。
そして仕上げに自分たちで、差別の実態を追体験(ロールプレイ)します。
「差別」というテーマに14ページを割き、いろんな角度から分析しています。それぞれの差別の事象を並べるだけでなく、差別の本質を明らかにし、差別の問題が体系的に頭に入るようになっています。
「平等」には、二つの章(第3章、第4章)、32ページを割いています。
第3章では、税の必要性と累進制、社会保障制度の仕組み、社会的権利の獲得の歴史などを学ばせます。
とくに就業連帯所得保障RSAについては、<学習>だけでなく<討論>においてもとりあげ、平等と連帯の原理が機能していることを教えます。
社会保障については、たとえば次のような問いによって、具体的に把握させています。
1.セバスチャンの事故の後、社会保障はどういう役割をしますか?
2.ジュリエットは毎月、家族のための何を受け取りますか?それはなぜですか?
3.社会保障はレアに何を支給しますか?それはなぜですか?
4.社会保障の財源は何ですか?社会保障の三つの基金は、何ですか?
5.社会保障カードは、誰のためのものですか?誰がそれを使用しますか?
6.以上の個々の例を頭に置いて、1946年憲法前文のエッセンスを示しなさい。
第4章では、男女差別および排除との闘い、不平等を減らす国・自治体・人道団体(心のレストラン)の取り組み、機会の平等、公立病院の意義、障害者対策などをとりあげ、平等の実現への取り組みがなされていることを教えています。
私には、第3章のなかの「平等、それは建造中の価値」L’égalité, une valeur en construction という言葉が印象的でした。
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お詫びと訂正>
前のエントリーの最後に、このあと公民Education civiqueを紹介すると書きましたが、仏独共同教科書の第二次世界大戦の部分を紹介することにします。お詫びして訂正いたします。 jeanvaljean
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