イル・サンジェルマンの散歩道

　世界第一位の工業国であるアメリカは、「民主主義の兵器工場」（ルーズヴェルト）となった。国民の戦意は、マスコミの全分野を動員した旺盛な宣伝活動によって、確実に高揚していった。総力戦では、戦闘員は当然死亡率が高いが、民間人も軍人とほとんど同じくらい犠牲者を出している。


総力戦そして動員


１９４２年につくられたHubert Rogersの手によるカナダのポスター、戦時情報委員会作成
「すべての戦線において攻撃」


戦時のマス・カルチャー


１９４２年に制作されたTax Avery のアニメ映画。この「三匹の子豚」の反ナチパロディーでは、狼がヒットラーになっている。
「狼をやっつけろ」

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ゲッペルスの「総力戦」

　この冬東方のステップの地から、人間の想像と歴史の経験を遥かに超えた凶暴さをもって、嵐が我々の名誉ある大陸を襲ってくる。ドイツ軍は同盟軍とともに、その敵を迎え撃つ唯一の要塞となる。[・・・]

　東部戦線においては、情け容赦もない戦争が熾烈を極めている。[・・・] もはや勝利も敗北もないのだ。あるのは、生き残るか、皆殺しかである。我々に向かって押し寄せるソ連師団の後ろに、我々を殲滅させようとかまえているユダヤ人の特別攻撃隊がいることを、我々はすでに知っている。そしてその後に恐怖がつづくのだ。[・・・] ドイツそしてヨーロッパを襲う機械化されたロボットが、その絶頂に達する。[・・・] 東部戦線では、国民すべてが戦いを強いられている。男も、女も、そして子どもも、工場のみか、戦闘にまで駆り出されているのだ。強いられている。２億人の人々が、ゲーペーウーGPU* の恐怖のもとに、そして悪魔のイデオロギーに支配されて、野蛮かつ愚かしく、我々に立ち向かおうとしている。この冬、我々の戦線に駆け下ってくる戦車の大群は、２５年にわたる社会悪とボルシェビキの国民の貧窮がもたらしたものだ。[・・・]

私は諸君に問う。あなた方は総力戦を望むか？もし必要ならば、我々の想像を超えた、より全体的な、より徹底的な総力戦を望むか？

１９４３年２月１８日、ベルリンのスポーツ・センターにおいて、３，０００人の聴衆を前にして、ゲッペルスがおこなった演説

* ソ連の国家政治保安部


交戦国の生産高


左より国名（ドイツ、アメリカ、ソ連）、生産物（鉄鋼、飛行機、戦車）、生産高
鉄鋼は１００万トン単位、飛行機・戦車は台数


「民主主義の兵器工場」アメリカ



１９４３年１２月、カルフォルニア造船会社の工場で、アメリカ海軍への引き渡しを待つ９隻の軍艦。１９４２年にアメリカが開始した、勝利プログラム（「勝利のための計画」）の一環で、１，２８３隻の「自由の船」が量産された。１９４１年には１隻の製造に１年を要したが、１９４２年には５６日、１９４４年には１４日しか要していない。


＜学習の足跡＞

１．このポスターが、国民全体を戦争に動員するものであることが、何によってわかりますか？（資料）
２．戦争の宣伝は、どのような媒体によっておこなわれましたか？民主主義と全体主義の宣伝手段は、相似していますか？（資料、および）
３．ジョセフ・ゲッペルスとは誰ですか？彼は、敵であるソ連をどのように描いていますか？総力戦を開始することを、どのように正当づけていますか？（資料）
４．交戦中の三国の生産は、どのように推移していますか？この生産の推移と、戦争の主要な局面との間に、どのような関連を見ることができますか？（資料）
５．第二次世界大戦中、大量に製造された武器は何ですか？戦争の遂行に見られる変化は、どのように明らかになりますか？

結論として―
６．社会を戦争に動員する様々な形態を抽出して、第二次世界大戦がなぜ「総力」戦になったのか説明しなさい。

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これはフランスのLycée 1（日本の高校２年に相当）で使われる文学・社会経済コースの仏独共同歴史教科書です。

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