
労働者の権利が尊重されないとき
a.解雇通知(2,001年7月)

H氏、解雇についての企業の事前報告書を手にして、
「少し前から成績が落ちている。部下に対してあまりにも妥協しすぎて、決断するのが遅すぎた。職業的怠慢による解雇!」だって!
妻「3ヶ月前あなたは、会社の優秀販売部長として表彰されたじゃない!」
b.弁護士事務所

H氏「私はなんの落ち度もないのに、解雇されました。」
弁護士「あなたは、不当な解雇の犠牲者です。労働裁判所の労働審判所に訴えるべきです。それは、労働法を守っていません」。
<質問>
1.争っているのは、誰と誰ですか?
2.争いの原因は何ですか?
3.ベルナール・Hは、どういう決断をしましたか?

労働裁判所、訴訟手続きの進行
c. 労働裁判所調停部(2001年10月)

会社側「訴訟が行き詰まることは、目に見えています。和解には持ち込めても、訴訟には限界があります。」
H氏の弁護士「労働契約を不当に逸脱しています。私の依頼人は、解雇に対する賠償金と2年間の不利益分を即座に払い込むことを要求しています。」
裁判官「会社はH氏に、解雇にたいする賠償金の払い込みを受け入れる、しかし不利益分は支払う必要はないと判断します。」
H氏「私はそれに応じられない!」
d. 労働裁判所判決部(2002年7月)

d. 労働裁判所判決部(2002年7月)
H氏の弁護士「解雇は不当です。正当で根拠のある理由は、なにひとつありません。私の依頼人は、いま失業中です。解雇されるまでは、優秀な販売部長だったのです。私は、彼が蒙った不利益分として、2年間の賃金を要求します。」
会社側弁護士「会社は、H氏に解雇に対する適法な賠償金は支払うことを約束します。彼の妻は現役の労働者です。ですからH氏は経済的に苦しいわけではない。不利益分としては、3ヶ月の賃金で充分です。」
審判員「決定は、2002年の11月10日になります。」
e.労働裁判所の決定(2002年11月)

H氏「解雇の賠償金の決定を受け取りましたが、しかし不利益分として6ヶ月分しか認められませんでした。」
H氏の弁護士「上訴しましょう。」
<質問>
1.ベルナール・Hの弁護士は、何を要求しましたか?
2.会社側の立場は、どのようなものですか?
3.審判員は、何をすると言いましたか?
4.ベルナール・Hは、決定に満足しましたか?
f.高等裁判所(2004年5月)

H氏「私が解雇されたとき、私の販売業績は下がっていませんでした。」
裁判長「私にはわかりませんね。あなたはH氏に販売責任者として優秀賞を授与したんでしょう。それなのに3ヶ月後には根拠のない理由で解雇している。あなた方は法律を守っていない。」
会社側「私たちは、不利益分について再検討する用意があります。」
2004年7月
リールの高等裁判所は、ベルナール・Hの方に正当性を認めた。会社は彼に、解雇に対する賠償金および特別手当、不利益分として1年間の賃金を支払った。さらに会社は、彼が負担した裁判費用を払い戻さなければならなかった。
フランスの中学3年(日本の中学2年)の教科書「明日、市民になる」より
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