
パリジャン紙の5月3日付けに、「オランド―サルコジ討論を解読する」という記事がありましたので、あらましを紹介します。
雇用
数字をめぐる激しい応酬が続いた。オランド候補「この5年間失業者は100万人増え、登録している失業者は400万人だ。多すぎる。記録的な数であり、失敗だ」とオランド候補が攻めれば、「あなたの数字は間違っている。増加は42万2千人だ。2007年から2011年にかけては、18.7%の増加だ」と反撃した。
二人の数字の違いは、情報源の違いである。オランド候補は、雇用局の資料からもってきたフランス国内からみた数字で、2007年の323万人から現在の430万人へと、
約100万人の失業者の増加を表している。すなわちカテゴリーA(このひと月に就業活動を一切行なわなかった)の求職者の数は、たしかに「この5年間で70万人」(正確には74万7千人)である。
サルコジ候補は、もっと少ない増加数を主張した。これも間違ってはいない。彼は雇用局の資料ではなく、国際労働事務局BITの資料に依拠した。各国の比較をしたもので、フランスにとって有利な数字である。BITによると、欧州連合の失業者数は2007年以来39%増、すなわちフランスの2倍である。イタリアは37%増、イギリスは67%増、そしてサルコジ候補が強調したように、スペインでは「社会主義の7年間」に191%の増加である。
移民
オランド候補は、合法的な移民は20万人としたのに対して、サルコジ候補は18万と言った。この二つの数字は、その差が小さい上に、ともに正しい。オランド候補は、過去10年間の平均をとったのに対し、サルコジ候補は過去1年間の数字(内務省の2011年の18万2千人)を採用したのである。それでもサルコジ候補は、相手が家族呼び寄せの最適所得について語ったとき、「違いをはっきりさせるために」わざわざこの数字を強調した。論点が対立したのは、むしろ非合法の移民についてであった。
とくに意見が違ったのは外国人の投票権の問題で、とりわけ地方選挙に非ヨーロッパの外国人の投票権を認めるかであった。オランド候補は、長年フランスに滞在している納税者の投票権を支持した。かつては好意的であったサルコジ候補は、考えを変えて「共同体の圧力と緊張」の脅威を強調した。ヨーロッパでは12か国(スエーデン、オランダ、ベルギーなど)が、地方選挙の投票をすべての外国人に開放した。アイルランドが1963年から、ギリシャが2010年からである。そのかわりライシテの原理については、守ることで一致した。
負債
「負債は、(大統領任期の)5年間に6千億ユーロに膨れあがった」とオランド候補は財政政策を攻撃し、サルコジ候補は、それに異議を唱えた。サルコジ候補は国立統計経済研究所Inseeの数字に依拠した。それによると、官公庁全体(国、地方自治体、社会保障)の負債は、2007年第二三半期の終わりが1兆2211億ユーロで、ほぼ5年後の2011年末には1兆7173億ユーロとなっている。正確には4,962億円で、サルコジ候補はそれをもとに「5千億ユーロ」と言ったのである。
数字の応酬は対外赤字にも及んだ。対外赤字(輸出入の差額)は、2011年末には最高額(6千100億ユーロ)に達していた。オランド候補が、対外収支が黒字であった最期の年はジョスパン内閣の時であったと言うと、「違う」と反駁した。しかしそれは事実である。Inseeによると、10年前は6億1千万ユーロの黒字であった。
教育
教育は、フランス人の関心を引く問題である。なぜならば1,200万人の生徒が教育を受けているからである。オランド候補は、この5年間で教育の質は低下していると明言した。原因は、教員のポストが少ないことである。彼によれば、生徒がよりよく学習し、クラスの負担を少なくするには、教員を増やさなければならない。それで彼は6万のポストの創出を約束する。
サルコジ候補にとっては、「学校の問題は量の問題ではなく、質の問題」である。彼は、週18時間勤務だけでなく、平均25%の報酬を追加して、26時間勤務(21時間は授業、5時間はとりわけ理解が難しい生徒に向き合って教える)のボランティア教師の配置を提案する。「あなたは、25%の報酬しか払わなくて、50%の対面授業を要求するんですね。もしあなたがこの報酬で教員を探すときは、私たちに言ってください」とオランド候補は皮肉った。サルコジ候補はすかさず「私は、授業の時間と、生徒や親に対面する時間とは、報酬がちがうと考えます」とやり返した。また数字の問題で双方はやり合った。オランド候補は、「経済協力開発機構OCDEの国の中では、高校2年生におけるクラス単位の生徒数が最も多い」と批判した。サルコジ候補は、初等教育ではクラスの生徒数は平均23名であると断言した。国民教育省によると、クラス単位の生徒数は、幼稚園では1クラス25.9名、小学校では22.7名であった。OCDE加盟国の中では、初等教育における生徒数の平均は、1教師あたり16名(フランス19.9名、すぐ下には20.2名のイギリスが続く)であった。
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