1933年以降抑圧されつづけた左派政党は、広範なレジスタンス運動を統率するにはあまりにも弱体であった。共産党のレジスタンスは、1942年末に潰滅した。トーマス・マンといった知識人や、1933年プラハでSOPADE社会民主党を旗揚げした社会民主主義者の活動家たちがナチズムに反対する闘いを組織したのは、外国の地においてであった。
従ってナチズムにたいするドイツ人のレジスタンスは、おもに保守の政治家であった。彼らの大半はヒトラーの対外政策を支持したのであるが、ドイツの救済[ヒトラー 訳注]はこれから自分たちを追い出しにかかると判断した。「白バラ」の学生たちはナチス体制に対して、彼らの精神的、市民的レジスタンスを体現した。

ハンス・ショールとソフィ・ショール、レジスタンス組織「白バラ」の指導者。ミュンヘン1942年。
「赤いオーケストラ」のチラシ
赤いオーケストラは1940年の初め、もっとも重要なレジスタンス組織を形成した。さまざまな社会的、政治的階層(共産主義者だけではなく)から150名が結集した。彼らは情報をソ連に伝達したあと、1942年末から1943年初めにかけて処刑された。このビラは1942年2月に、およそ数百人に送られた。
ゲッペルス大臣は、絶えず我々を煙に撒こうとしたが、事件についての重々しい語り口は、 我々に警告を与えるものだった。我々のおかれた状況が、月を追うごとに悪化するのを、だれも否定できなかった。起こったことの恐るべき内容を前にして、我々のすべてを脅かす国家社会主義政策の破たんを前にして、目を閉じる者はいなかった。[…]
ドイツ国民は、労働者の、兵士の、そして労働する知識階級の社会主義政府を必要としています。[…] 国民が新しい政府を手にすればすぐに、世界の中に新しい友そして同盟国を求めなければなりません。[…] もう憎悪、デマゴギー、反動思想にもとづく未来をつくることはないでしょう。私たち国民の友は、ヨーロッパの進歩主義的勢力そしてソ連邦の中に確かにいるのです。ドイツの次の政府は、これらの勢力と協力していかねばなりません。[…] この基礎の上に、1939年春の国境をもって無傷のままのドイツ国家を保持することが可能なのです。[…] 真実が国民に語られないことに私たちが耐える時間は、それほど長くはないでしょう。うぬぼれが強く、一連の事件によって何度も否定された一握りの個人が、国民の最も活発な部分を監視下に置こうとすることに、私たちが我慢する時間は、それほど長くはないでしょう。国家とは、盲目的に信頼することができる超越的な存在であるという、ドイツの古い考えを捨てることです。いま国家は、思い上がった良心の咎めもなくした、少数の個人の手に落ちた巨大機構です。
Gilbert Merlio, 「ヒトラーにたいするドイツ人のレジスタンス」、Tallandier, Paris, 2003
白バラ「すべてのドイツ人へのアピール」
白バラ(die Weifie Rose)の名が記された最初のビラは、1942年の夏に作成された。グループをつくったのは、ミュンヘンの医学部の学生であるAlexandre Schmorell とHans Scholle、そしてHansの妹であるSophieである。HansとSophieの兄妹は1943年2月18日に逮捕され、即決裁判で2月22日に処刑された。このアピールはロンドンに伝達され、BBCがこれを放送し、イギリス空軍が「ミュンヘン学生たちの声明」と題して、数百万枚を投下した。
戦争は、不可避的に終結に近づいている。1918年と同様に、ドイツ政府は高まる危機に際し、潜水艦に注意を向けようとしている。東部戦線では軍隊が撤退し、西部戦線では上陸が準備されているというのに。数学的確実性のごとく、ヒトラーはドイツ国民を破滅に導いている。ヒトラーはもはや、戦争に勝利することができない。戦争を長引かせることしかできない。[…]
ドイツ人よ!あなたは、あなた自身そしてあなたの子どもたちが、ユダヤ人が蒙った運命を共有させたいのか?あなたは、この地上で永遠に最も憎まれ、最も拒絶された国民にならなければならないのか?否!なぜならば、あなたたちはナチスの人間に値しない連中とは区別されるからだ!あなたの考えが彼らとは違うことを、行動で示そう!自由のための、新しい闘いが始まるのだ。あなたが、あなたの心を覆っていた無関心の服を引き裂こう!手遅れにならない前に決断しよう・・・
権力の帝国主義的思想の出現を、完全に根絶することは不可能に違いない。ヨーロッパの人民との惜しみない協力こそが、新しい秩序の基礎を築くことを可能にする。プロシャ的国家がドイツおよびヨーロッパに建設を試みた、ナチスのような中央集権的権力は、すべて卵であるうちに潰さなくてはならない。将来のドイツは、連邦制しかありえないであろう。労働者は、理性をもった社会主義によって、屈辱的な奴隷状態から解放されなければならない。ごまかしの自足自給経済は、ヨーロッパから消え去るに違いない。国民のすべてが、すべての個人が、この世の善を享受する権利をもっているのだ!
Gilbert Merlio, 「ヒトラーにたいするドイツ人のレジスタンス」、Tallandier, Paris, 2003
スポンサーサイト
trackback URL:http://billancourt.blog50.fc2.com/tb.php/698-47628905