「ウサギの島」 文 J.MULLER、絵 J.STEINER
Editions Duclot、1978年、32ページ
対象 小学校2、3年
灰色の大ウサギと茶色の小ウサギは、ウサギの飼育工場の檻の中で肥え太らされていました。ある日、二匹は檻から脱出しますが・・・自由であることは、つねに危険がともないました。
自由について考えるための優れた絵本。つまり自由と安全は両立しうるか?刺激的な本でもある。つまり抑圧に満足することを告発しない。自由とは獲得すべき価値であり、脆い価値である。デカ灰ウサギのように、奴隷が束縛を好むこともある
目標とする概念
この美しい絵本は、自由について考えるためのものです。つまり自由と安全は、両立が難しいのだろうか?この絵本は、勇気づけてもいます。抑圧に対して卑屈になることを告発しているのではありません。自由とは獲得すべき価値であり、しかし壊れやすいものであるということ、つまりデカ灰ウサギを通して、奴隷は束縛を好むことが起こりうるということを語っているのです。
物語を分節する
表紙を見て、みんなで物語についての仮説(登場人物、場所、出来事)を立てみます。仮説を立てることによって、生徒にその先を知りたい気持ちを抱かせ、読むことが生徒の疑問にたいする答えとなるようにします。
1.工場(P1~P9)
P3~P7まで黙読させます。それから全体で工場についてわかったことについて意見交換します。そして工場での飼育と、生徒が知っている牧畜の比較をさせます。難しい言葉(機械的、人工の、卸市場など)について説明します。
P6とP7では、デカ灰ウサギの視点から書かれていることを発見させます。そして文は、ウサギたちが知っている以上のことについては語りません。



こうして生徒は、物語の次の展開に進みます。まずこれまで読んだところを振り返って、それからP8とP9の6つの絵を、文を隠して観察します(チビ茶ウサギが次第に大きくなっていることに気がつきます)。それから二匹のウサギの会話を黙読します。



黙読のあと、質問をします。グループで討議。
―想像していたことと、読んでわかったことを比較しなさい。
―読んだことで、どんな意味が絵に付け加えられましたか?何が確認できましたか?二匹の登場人物はどんな反応を示しましか?
―大きくなったウサギたちにはどんなことが起こりますか?
デカ灰ウサギの説明は、生徒たちを納得させたようですか?絵本の中で語られ、描かれたことは、すべてウサギたちからの視点です。しかし私たち読者は、飼育工場の中で、ウサギたちを待ち受ける運命について知っています。このギャップが、この物語に寓話としての特性を与えます。すなわち隷属する人間は、安眠をむさぼり自分の運命も知らないウサギたちとはどう違うのか?生徒たちがこのことをすぐには理解できないだけに、これを強調しなければなりません。すなわち、うわべだけの読解を乗り越え、また真実に対する荒っぽい見方(多くのことを知っているようであるが、幻想で自分を欺いているデカ灰ウサギのように)を拒否することの難しさがあるのです。
現代史における似た状況に関連づけてみる。例えば強制収容所あるいは絶滅収容所における犠牲者の、加害者に対する抵抗あるいは協力。
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