□寓話を読む。「犬と狼」
ラ・フォンテーヌの寓話の中の「犬と狼」は、自由と安全を交換する主人公を扱っています。
犬は、身の安全と餌の確保と引き換えに、自分の自由を放棄します(繋がれ、首輪をはめられることを受け入れます)。この取引は、狼とは成立しませんでした。狼には、いったん自分の自由を放棄し隷属を受け入れてしまうと、安全や食べ物さえも、主人の優しくもなり意地悪にもなりうる気まぐれさに依存し、ついには取り上げられることにもなることがわかっていたからです!こうしたことを説明したあとで、この寓話を朗読することもできるでしょう。難しい表現も明快になってきます。また犬と狼の出会いのシーンを、自分の言葉を使って、場合によっては寓話の対話を使って、生徒に演じさせることもよいでしょう。
「狼と犬」(ラ・フォンテーヌ 寓話 1巻-5)
一匹の狼が、骨と皮だけになっていた。
見張りの犬があちこちで、厳重に警戒していたからだ。
狼は、うっかりして森に迷い込んだ農家の番犬と出会った。
大きくて強そうな、脂ぎって毛並みもつやつやとした奴だ。
襲いかかって、かみ殺してやる。
いつもはそうしてきた。
一戦を交えることになるが、
こいつはデカいし、
闘争心も旺盛のようだ。
そこで狼は、下手に出た。
さっそく話しかけてお世辞を言った。
栄養が行き届いているのを褒めたのだ。
「それはおまえさん次第だよ。
私のように肉が付くようになるにはね」と、即座に返事が返ってきた。
「森を出ることだね。そうしたほうがいい。
森にいるおまえさんの仲間は、みじめなものだ。
怠け者で、哀れな奴ばかりだ。
飢えで死にかけているじゃないか。なぜだかわかるかい?なにも保証がないからだよ。代償がない食い物なんてないんだよ。何事も力づくさ。
私についてきなさい。もっとましな運命が、おまえさんを待っているはずだ」。
狼は言った。「何をすりゃいいんだね?」
「べつに、大したことをするわけじゃない。人間、つまり杖をついてくる物乞いや乞食を追っ払うとかね。あとは家のものに尻尾を振るとか、主人が気に入るようにね。そうすればお駄賃をくれるというわけさ。とにかく残飯がたらふく食えるよ。鶏とか鳩の骨とかね。それにやさしく撫でてもくれるしね」。
幸せな生活を思い描いていた狼の目は、感激の涙にうるんでいた。
歩きながら狼は、ふと、毛がない犬の首に目を留めた。それは何だい?」
「なんでもないよ」。
「なんだって?」
「だから、なんでもないよ。大したことじゃないよ」。
「でも、何だい?それは・・・」
「繋いでおく首輪だよ。おまえさんがそう見えるのは、たぶんそのせいだろう」。
「繋ぐだって?」狼は声を上げた。
「それじゃ、行きたいところへ行けないだろう」。
「いつもという訳じゃないよ。なにか問題でもあるのかい?」
「おおありさ。おまえさん食い物に関してね。おれは絶対にいやだね。
どんなに宝物を積まれたっていやだね」。
こういって狼はそこから逃げ出し、そのまま走り続けた。

□自由についての詩を読むことによって、ウサギの島の受け取り方が、いっそう鋭くなるでしょう。
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