原発の現場を、日本のギャングが浸食する。やくざが、汚染地区ではたらく労働者を違法に雇い入れた罪で逮捕される。 ル・モンド紙 2月5日付 東京特派員
日本の東北にあるフクシマの原発大惨事から約2年後、警察は罹災した地域で働く労働者を不当に雇い入れた容疑で、一人のやくざを1月31日に逮捕した。警察によると、アライ・ヨシノリは、山形県を本拠とする暴力団幹部で、12,600名を擁し、日本第二の勢力をもつ犯罪組織である住吉会に属している。
アライ氏は山形の下請け業者の日雇い労働者を、くりかえし福島県の伊達市の放射能汚染地区に送っていた。労働者たちには、一日の重労働に対して約束された2万円の半額しか支払わなかったようである。残りは新井氏の組の懐に入ったとされる。
この事件は、復興とそのための数十億円の資金に詐欺師たちが群がることを示している。この数年間、より抑止的な法律と暴力団組員に対する警察の取り締まりによって収入源を失っただけに、暴力団にとって作業現場は魅力的である。2011年の暴力団排除条例は、暴力団員と関係を持ったり、あるいは事件を起こしたものはすべて処罰する。
マフィアは、多額負債者、精神障碍に苦しむ人、住所不定者をターゲットにする東北の罹災地では暴力団が、解体作業や廃棄物の処理といった復興に結びつく大部分の事業に関わっている。警察は、37件につて調査をおこなっている。2012年の5月には、栃木県の裏社会を通じて労働者を福島の原発に送った容疑で、住吉会の別の幹部であるオワダ・マコトを逮捕した。
とりわけ原発事故の処理におけるこの詐欺師の存在については、ずいぶん前から明らかになっていた。調査ジャーナリストであるスズキ・トモヒコは、2011年に「やくざと原子力」という本を書いている。この本を書くために彼は、2011年の夏に地方にある東芝の子会社―彼は暴力団とは無関係であることを明言している―に雇われ、1年半のあいだ原発で働いた。
彼によると、やくざは事故直後から、被害を最小限度に抑えるための戦いに参加していた。彼らは「人を集め、原発に送ることを任されていた」。そして多額負債者、住所不定者、精神的な傷害に苦しむ人々をターゲットにした。鈴木氏によれば、これはフクシマの事故以前からおこなわれており、原子炉を構成する全体に関わるもので、最も危険な作業をこの助力に頼らざるを得ないのである。
原発の爆発当初から人手不足に陥っていた東京電力TEPCOは、「死を恐れない者たち」を回すように、募集係に頼んだようである。
2011年7月19日に [事故収束に向けた道筋]を発表したことが、東京電力に原発に関連した活動をやくざから排除する意向をもたせた。会社側は、彼らが詐欺師と何の関係もないことを肯定する下請け会社に、資料にサインをさせることを決定した。しかし裏社会への依存は、その確認を不確定なものにする。
アライ氏の逮捕の公表は、原子力規制委員会NRAの有力メンバーである名雪哲夫を巻き込んだ事件と時を同じくする。NRAは、とくに日本における原子力の「制御に対する日本および外国の信頼を回復するために」、2012年9月に設置された。1月22日名雪氏は、福井県の敦賀原発の地下の断層についての情報を、原子力関連会社のひとつである日本原子力発電会社JAPCに不法に渡した。
NRAが地震の危険性を評価するために全ての原発を検査する際に、JAPCは、優位にたって反論を準備し、これらの情報が公になることに反対する心づもりをするために、この報告に目を通すことを望んだのである。
会社は、ロビー活動であることを否定し、名雪氏に関する金の受け渡しを否定した。
PHILIPPE MESMER
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